【名古屋 vs 鹿島】その献身は感動的なほどに。長谷川アーリアジャスールは最後の一戦もチームのために走り続ける。

2019年12月6日(金)


21点差以上で負けない限りは残留が決まる。何とも言えない“ほぼ残留”状態で迎える今季の最終節にあたって、名古屋の選手たちのメンタルは試されている。常識的に考えれば残留に対する不安はないも同然だが、そうした安心感は公式戦をたたかうにあたって余計な足枷ともなるからだ。しかも相手は鹿島で、優勝は逃したものの勝点ゼロではACL出場権を逃す可能性もあるため、アウェイと言えど必勝を期してくることは間違いない。残留争いと同じく難しさのある試合で、だからこそ前節までの結果で残留をほぼ手中に収めることができたのは大きなことでもあった。シーズン最終戦とは常にそうであるが、今節はなおさらに「何を見せられるか」が焦点になってくるなかで、名古屋の選手たちがどんなプレーでそれを示すのかは一つのチェックポイントにもなってくる。

「気の緩んだプレーをするなんて考えてもないし、対戦相手も良いチーム。だから、来季やこれからにつなぐためにもすごく重要な一戦になる」。迷いなく言い切ったのは長谷川アーリアジャスールだ。移籍2年目のシーズンは序盤こそベンチスタートが多かったが、JリーグYBCルヴァンカップで素晴らしい動きを披露しリーグ戦スタメン獲得につなげ、以来は安定して主力の座を守り続けてきた。本来の中盤よりも今年はハードワークができるFWとしての起用に特徴を発揮し、高い戦術眼をもって守備タスクを遂行する仕事人的な働きが認められてきた。負けはしたが前節の磐田戦でも同点ゴールを捻じ込む勝負強さも見せており、この最終戦でも重要な戦力として勝負に関わることが期待されている。オープンな人柄でチームメイトはおろか報道陣、サポーターにも広く愛される男は、残留争いの悔しさを滲ませながらもホームゲームにかける思いを口にする。

「名古屋での1年目も最後に劇的に残留したので、そのぶんだけ強い気持ちで今季に入りました。序盤は良い流れだったけど、結果的にはいま残留争いをしているので、それはもちろんファン、サポーターの皆さんが求めている、思い描いていた1年ではないですよね。ただその苦しい中でも応援してくれる人たちはいてくれたから、残留がほぼ決まった今だからとか、そんな軽い考えを持ってはいません。『残留がほぼ決まっている』と安堵したようなプレーをしてしまってはダメ。目の前の試合を本気で勝ちに行く、最終戦だろうが開幕戦だろうが、そういう気持ちでしっかりと試合に入っていかなければやられる。まして最終戦はホームですから」

今季こそは。それは長谷川の強いモチベーションとして彼を奮い立たせるものとなっていた。前述したように今季の長谷川はハードワーカーとしての印象が非常に強く、それは例えばFWでの守備のチェイシングなどに色濃く表れる。前節の磐田戦でもキックオフから猛然とボールを追いかけ回し、後方の負担を少しでも減らそうと身を削っていた。「もうチームでも年齢が上の選手なのでね」と長谷川はそのたびに言い、「上の選手が走れば若いのも走るでしょ」と日々の練習から背中で見せる姿勢を貫いてきた。個別のフィジカルトレーニングにも精を出し、走り方からスタミナ、クールダウンなどの細かなケアも怠らずに積み重ねてきた結果が今季の29試合出場というチームの信頼を表す数字である。「それをもっと結果に結び付けなければいけなかった」とはプロの矜持を感じるところだが、“2年目の意気込み”は一つの手応えとなって、鹿島戦への彼の自信を形作るものにもなっているようだ。

「自分の中で、どんな状況でもしっかりとした準備をするというのはこの1年間考えてきたことでした。どうしても去年の悔しい思いがあったので、今年はやってやろうという強い気持ちがありましたから。そういうメンタル的な部分でも常にやるべきことをやろうとは意識できていたと思います。シーズンも残り1試合、残留がほぼ決定したという状況下での次の試合に自分をどう持っていけるかは、自分が試されるところ。それは今後の自分にとっても重要なことになってくる部分です。続けてきた準備も、気持ちの面も、しっかりと保ったまま鹿島との試合にも臨みたいと思っていますね」

そして長谷川は「見に来てくれた人たちのために、グランパスにかかわるすべての人たちのために、一つでも多く勝ちたい」と言う。その上で楽しいプレー、良い試合を見せるのがプロの務めだとも。今やフィッカデンティ監督のスタイルを体現する上で欠かせなくなった“長谷川アーリアジャスール”というピースは、最後の90分間も体力の続く限りチームのために走り続ける。31歳の激走と勝利への執念は、必ずや勝利でのシーズン締めくくりを実現してくれるはずだ。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


明治安田生命J1リーグ 第34節
12月7日(土)14:00KO 豊田ス
名古屋グランパス vs 鹿島アントラーズ
豊田スタジアム(名古屋グランパス)
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