【名古屋 vs 鹿島】 ウォーミングアップコラム:和泉竜司が見せ始めた新たな顔。“攻撃的ボランチ”が名古屋の攻撃を加速する。

2018年8月10日(金)



この男にはまだこんなポテンシャルがあったのかと驚かされている。学生時代は勝負強いアタッカーとして名を馳せ、高校選手権決勝での大立ち回りは今なお語り草。明治大を経て名古屋に加入した時も、トップ下を中心とした得点に持ち味のある選手としての期待をかけられていた。
しかしプロ2年目の昨季、風間八宏監督によってそのポリバレント性を見出され、サイドバックに始まりウイングバック、ボランチ、攻撃的MFとポジションを転々とすると、果ては3バックのストッパーまで経験。「どこでもできるというのは彼の持ち味」(風間監督)と全幅の信頼を置かれるようになり、現体制で不可欠な選手の一人となった。

ただし、和泉竜司(写真)は決して器用な選手ではない。どのポジションにいても彼のプレーは実はそれほど変わらない。一度ボールを持てばそう簡単に奪われないキープ力と、意外性のあるボールタッチを駆使したドリブル、攻守の切り替えの速さとパス&ゴーに対する高い意識。それらをポジションごとの特性に合わせて割合を変えて表現しているだけである。サイドバックならば縦への推進力にその傾向を変え、前線ならば仕掛けとペナルティエリアへの突破力にその力を注ぐ。昨年のポリバレント暮らしでなまってしまった得点感覚も、今季は居残りでのシュート練習を自らに課すことでかなり持ち直した。前置きが長くなったが、そうした経緯の中でいま、和泉は新たな扉を開こうとしているのである。

5名の新加入選手が出揃った(エドゥアルド ネットは欠場だったが)仙台戦から、和泉はそれまでの左サイドバックからボランチへとコンバートされている。これまでの“ボランチ・和泉”といえばキープ力を生かしてボールを引き出し、周囲にパスを供給することを主な役割としてきたのだが、ここ2戦は明らかにプレーエリアからして全く別物だ。より前線に広範囲な動きで攻撃への関わりが強く、中盤での仕掛けから攻撃を加速させるスイッチを入れるような動きが目立つ。ミドルサードでのドリブルは安全性をわきまえる必要があるが、今の和泉は攻撃への意識がとにかく高い。当然、対峙する相手はボール奪取力に優れる選手が多いのが中盤である。「まだ無駄なボールロストが多い」と風間監督も注文をつけるが、和泉には和泉の流儀と狙いがある。

「監督からもどんどん前に行っていいと言われていますし、普通のボランチというよりは少し攻撃的な部分を意識してプレーしています。ポゼッションに関わるというよりは、間でボールを受けて前線でプレーすることを意識しているので、そういう部分で前とは違っているのかもしれませんね。ゴール前のプレーも増えていると思いますし、後ろには(小林)裕紀さんもネットも、マルさん(丸山祐市)もシン(中谷進之介)もいて、今はそこでボールが落ち着いて回せる部分もあります。それなら自分は変に落ちていかなくてもいい。もちろん落ちてボールを受けないといけない時もありますけど、なるべく前で関わる意識はあります」

経過は良好だ。仙台戦では鋭い縦パスで前田直輝の得点を演出し、G大阪戦でもジョーの2点目の起点となる縦パスをやはり前田に通してチャンスメイクしている。前田については「しっかり視界に入って動き出してくれるので、見逃さないようにしています」と相互理解も深く、相性の良さも互いに感じている様子。和泉としては「もっと自分でシュートやドリブルなどゴールに直結するプレーを増やせるので、そこはどんどん貪欲にやりたい」とさらなる一歩を踏み出す意気込みでおり、そんな“教え子”の加速っぷりには風間監督も目を細めるばかりだ。

「彼の中で何が変わったかは知らないけど(笑)、毎日練習していればそのうち“見える”ようにはなってくる。彼はまだ無駄なボールロストが多いから、もう一つグレードアップしてほしい。何を的確に選んでいくか。一つの選択肢しかない時には素晴らしいプレーをするので、次はいくつもの選択肢の中からその一つを速く的確に選べるようになれば、またすごくレベルが上がると思う」

ボールロストの部分については和泉本人ももちろん課題に感じているが、一方で状況判断の結果でもあるという。例えばG大阪戦では0-2のビハインドを背負う中で、「自分が相手をはがせばチャンスだと感じていました。裕紀さんにも『取られてもいいからドリブルで行きますね』とは伝えていましたし、点差も点差でしたから」と、リスクを背負って反撃の勢いを出すためのプレー選択だったと述懐する。だから今節の鹿島戦をイメージする上では「カウンターが速いし、前に一人で持っていける選手がいます。ボールロストを減らす部分は意識します」とリスクマネジメントも十分に臨む。

勝てば3連勝、鹿島を相手にそれを成せばチームにはまた別の勢いも出てくる。今節は限定ユニフォームの配布などもあり、豊田スタジアムの前売りチケットは既に完売。4万人の観客動員も現実味を帯びてきた中で、選手たちは降格圏脱出のための勝点3を貪欲に求める。和泉は「今は毎試合が大事で、今の状態をキープしたい」と連勝中のチームに手応えを感じつつ、一息おいて「…余裕はないですから、勝つために頑張りたい」と静かに闘志を燃やした。勢いは出てきたが、いまだ名古屋は最下位である。今や数少なくなってしまった生え抜きの一人として、和泉竜司の危機感は強い。そのこともまた、彼を前へと、勝利へと駆り立てるのである。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


明治安田生命J1リーグ 第21節
8月11日(土)18:00KO 豊田ス
名古屋グランパス vs 鹿島アントラーズ
豊田スタジアム(名古屋グランパス)
みんなの総合評価 (4.4)
臨場感 (4.7)
アクセス (3.4)
イベント充実 (4.1)
グルメ (4.1)
アウェイお楽しみ (3.8)

移籍情報