【横浜FC vs 栃木】 ウォーミングアップコラム:期限付き移籍のトレードで新加入した守護神候補、弱冠20歳の辻 周吾は強気に出場記録を伸ばす。

2018年4月21日(土)


開幕から約2ヶ月が経過し、横浜FCのゴールマウスにこの男が立っていることを予想できた人は一人もいないと断言できる。開幕前には横浜FCの選手ではなかったのだから当たり前、ではあるのだが、それでも彼が3月末に加入したときでさえまさかその約2週間後にスタメン出場するとは思わないだろう。それでも弱冠20歳の新守護神候補は、「フッ」と鼻を鳴らして言うのである。「僕は試合に出るためにここに来たんで」と。

横浜FCのGK高丘陽平と、鳥栖の辻周吾(写真)の相互期限付き移籍が発表されたのは3月26日のことだった。横浜FCユース卒で22歳の高丘は昨季、南 雄太の負傷によって正GKに抜擢され41試合に出場していたが、今期は元日本代表の山本海人の加入と捲土重来を図る南の高い壁に阻まれ、ベンチにも入れない日々が続いていた。
一方の辻はジェフ千葉ユースから鳥栖に加入したが、2年間公式戦の出場はなし。今季の序列では権田修一、赤星 拓に次ぐ第3GKと目されていたが、赤星の離脱によって開幕からベンチ入りを続けていた。その若手二人がトレードのような形となったのは、同じベンチに置くにしても経験あるGKを欲した鳥栖側が、昨季の高丘の活躍と現状に目を付けて持ちかけた話と思われる。

つまり辻が横浜FCに加入を決めた際の序列はあくまで第3GKで、それも山本と南という実績も名声も十分な名手の控えだった。それでも「試合に出るためにここに来た」という気の強さ、若さゆえのギラギラした渇望が引き寄せたのだろうか。彼の加入直前に南が負傷、さらに山本も第7節・金沢戦後に負傷し、第8節・福岡戦のゴールマウスには辻が立っていたのだった。
初の公式戦出場にも、「前から準備はできていたので、緊張もあまりなく落ち着いてできた」と辻は言う。2失点は喫したものの落ち着いたプレーぶりで今季も昇格候補の福岡戦をドローに持ち込むと、前節の大分戦ではビッグセーブ2本を披露し1−1でアウェイでの勝点1に貢献した。「(2本のビッグセーブは)自分でも自信を持っていいと思うし、2試合とも下を向く試合じゃない」と振り返る辻だが、「でも100%のパフォーマンスをできてたわけじゃない。2試合とも先制しているのに(引き分けに終わった)、勝負強さという点では足りないし、技術もまだまだ」と、持ち前の気の強さに比例して当然ながら理想は高い。

南も山本海人も戦列に復帰し、辻がいつまでその座を保てるかは分からない。それは彼とて百も承知だろう。ちょうど水曜日、鳥栖ではルヴァンカップに高丘が権田に代わってスタメン出場した。「試合に出るだけなら、鳥栖にいても出れたのかも?」と投げかけてみたところ、一瞬遠い目になったが頭を振り、「選手としてはリーグ戦でスタメンに定着することが一番なので。ここでもらったチャンスを生かしたい」と、言葉に力を込めた。
「なら、シーズン終わりまで試合に出続けたら?」。すると20歳の守護神候補は、また「フッ」と鼻を鳴らして言うのである。「皆さんに『ずっといてほしい』と思わせるようなプレーをして、もっと価値のある選手になっていきたい。そう思わせられるか、思わせられないか、自分次第なんで」

福岡戦は2失点、大分戦は1失点。タヴァレス監督は彼のプレーぶりに、「慌てず、落ち着いている。責任感が強く、しっかりゴールを守ってくれる」と目を細めた。来たる栃木戦を失点ゼロで終えれば、「今までどこの国で指揮を執っても、若い選手を起用し、彼らの力を利用してチームを良い状態に持ってきた」という指揮官の信頼を確固たるものにする可能性はある。新守護神の誕生なるか。横浜FCのサポーターにはぜひホーム・ニッパツ三ツ沢球技場で、まだ馴染みの薄い背番号36の背中を大声援で後押ししてほしい。

文:芥川和久(横浜FC担当)


明治安田生命J2リーグ 第10節
4月22日(日)14:00KO ニッパツ
横浜FC vs 栃木SC

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