【名古屋 vs 福岡】 ウォーミングアップコラム(福岡):成長著しい冨安健洋。シモビッチとのぶつかり合いからは目が離せない。

2017年12月2日(土)


「不安はいっぱいあった(笑)。ただ、彼は今シーズンずっとレギュラーでやってきてくれましたし、彼の真ん中でのプレーを見てみたいとずっと思っていた」

これは、J1昇格プレーオフ準決勝後の記者会見での井原正巳監督の言葉。冨安健洋(写真)を3バックの真ん中で起用したことに対する報道陣の質問に答えたものだ。まるでテストでもしたかのような言い方だが、敗れればすべてが終わってしまう大事なトーナメントの初戦で、監督をそんな気持ちにさせてしまうところに冨安の実力が垣間見える。まだ19歳になったばかりだが、若手有望株などという言葉は彼には不釣り合い。18歳でJリーグデビューを果たしてからここまで、カテゴリー別代表チームでの活動や、累積警告で出場停処分を受けた試合以外は、ほぼスタメンフル出場を続けているという事実は、アビスパにとって欠かせない戦力であることを証明している。

その実力はもともと高く評価されていたが、今シーズンの成長ぶりは著しく、特に、U-20ワールドカップを経験した後のプレーぶりは目を見張るものがある。CBというポジションがら、対峙する相手は、ほとんどの場合が強烈な個の強さを持つ外国籍選手ばかり。だが、改めて振り返れば、冨安がやられた印象はほとんどない。それどころか、ほとんどの相手を完璧に近く抑え込んできた。J1昇格プレーオフ準決勝では、90分間にわたってドウグラス ヴィエイラを抑え込み、シュートを1本も打たせなかったばかりか、チャンスの芽さえ与えなかったのは記憶に新しい。

成長の跡が著しいのは「駆け引き」。相手よりも先にポジションを取り、時に激しく体をぶつけ、時にずるがしこく、主導権を握って守備をする。それは、ボールのあるところではもちろん、ボールのないところでも駆け引きを繰り返して相手の力をそいでいく。「駆け引きしないと、ただ真っ向勝負するだけでは勝てない」とは本人の弁だが、小手先で相手を制することができるほどプロの世界は甘くない。

そんな冨安が「J2で一番の実力」と話すのが名古屋のエース・シモビッチだ。「J2では一番だと思う。大きいし、けれどターンも上手いし、足下の技術も高い。一番いやな相手」とは冨安本人の弁。チームとしての名古屋との対戦成績は1勝1敗だが、今シーズン、冨安が勝てなかった唯一の相手でもある。そして、J1昇格をかけた大一番で、冨安は三度シモビッチと対峙する。

「やはり駆け引きしないと真っ向勝負しても勝てる相手ではないと思うので、90分通して、集中を切らさず、声を切らさず、常に頭を使いながら駆け引きしたい。2回対戦して、2回やられているので、次に抑えることができれば、目に見えて、改善できたというところは実感できるのではないかと思う」
優先されるのは自分のことではなくチームの勝利と話すが、相手のエースとの戦いを制することができれば、それはチームの勝利にもつながる。そして何より、プロ選手として、同じ相手に3度も負けるということは、プライドにかけても許せないはずだ。

90分間にわたって、いたるところで繰り返される冨安とシモビッチの駆け引き。そのレベルの高い争いを冨安が制する時、アビスパにJ1への扉が開く。

文:中倉一志(福岡担当)


J1昇格プレーオフ 決勝
12月3日(日)16:00KO 豊田ス
名古屋グランパス vs アビスパ福岡

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