【町田 vs 山口】 ウォーミングアップコラム:ライバルは東海大相模の主将として甲子園準優勝。元野球少年・増田繁人の縁

2017年11月11日(土)



11月12日のレノファ山口戦は、FC町田ゼルビアにとって大切な今季のホーム最終戦。シーズン終了で寂しくなった野球ファンに向けて、ゼルビアの後援会はスペシャルな企画を用意している。「プロ野球チームを応援している」「プロ野球チームのユニホームを着用している(上着のみで可、法被もOK)」という条件を満たす方を、先着1000名まで無料で招待するという異例の大盤振る舞いだ。

今回はゼルビアの主力選手の中でも「元野球少年」という異色の経歴を持つ、増田繁人(写真)を取り上げたい。

彼が育った千葉県鎌ケ谷市は、北海道日本ハムファイターズが練習や二軍戦を行う準本拠地。本人も「野球の街なんです。サッカーをやっている奴が学校であまりいなかった」と説明する土地柄だ。「野球が身近にあって親も好きだっだ」という理由で、小学生時代の増田は野球を始めた。

増田少年は高い運動能力を持ち、小6で166センチ(現在は189センチ)と体格にも恵まれていた。守ってはエース、打ってはクリーンアップを任され、「一塁に出て、盗塁盗塁ホームスチールで(ホームに)帰ってくるみたいな感じで無双していました」というほどの”逸材”だったという。

彼は「ビッグファミリー」という軟式クラブに所属し、元プロ野球の丹波健二氏の指導も受けている。丹波氏は社会人野球が金属バットを使っていた1991年の都市対抗野球大会において、東芝の選手として「1大会9本」という不滅の本塁打記録を作った往年の名選手。「丹波さんの息子がいて。その関係でコーチをしてくれた」と増田は振り返る。

市内のライバルが「鎌ヶ谷南部少年野球クラブ」の福山亮選手(東海大相模高→駒澤大→東芝)だった。彼も現在は野手だが小学生時代は投手で、増田は「あいつと投げるのは超楽しかったですよ」と当時を振り返る。

増田と福山は高校3年になると野球部、サッカー部のキャプテンとして、それぞれの全国大会で活躍を見せる。福山は東海大相模高の三塁手として夏の第92回全国高校野球選手権大会で準優勝を成し遂げた。増田は連絡を取って福山に応援メッセージを送り、テレビで試合を応援したという。

冬には増田が流通経済大学柏高のセンターバックとして、第89回高校サッカー選手権に出場。彼もベスト4まで進んだ。既に高校野球を引退してた福山は増田の応援に訪れた。そして増田と福山の交流は今も続いている。

小学生時代の増田少年は野球がメインだったものの、「ミナトサッカークラブ」でサッカーにも接していた。彼は「ずっと絶え間なく動いてテンポも速い」というサッカーの楽しさに惹かれていく。増田は「野球もすごく楽しかった」と振り返るが、中学からはサッカーへ転ずることに決めた。

野球なら硬式のクラブチームからいくつも誘いを受けた増田少年だが、サッカーのクラブ探しは難航した。最終的に彼は「FCクラッキス松戸」へ進むのだが、いくつかの「縁」があって辛うじて合格を手に入れたという経緯がある。

増田は振り返る。「肘が痛くて接骨院に行って、先生に『僕サッカーがしたいんですよね』と治療しながら言ったら、先生の友達がクラッキスでコーチをしていたんです。『セレクション行ってきなよ』って言われて申し込みました」

しかし増田はフットサル場で行われたセレクションでいきなりスローインをして、周りをドン引きさせてしまう。フットサルはスローインでなく「キックイン」でプレーを再開するのだが、当時の増田にその知識はなかった。体格や身体能力に恵まれていたとはいっても、サッカーについてはほぼ素人だった彼はセレクションに落ちる。しかし3回目のセレクションで「最後の滑り込み」を果たした。

増田は後にこんな合格理由を聞いたという。「明るく楽しくやっていたら、ブラジル人のコーチが『アイツは伸びるかもしれない』って言ってくれたらしいです。代表は落とすつもりだったらしいんですけど(笑)」

増田はそこからプロサッカー選手となり、今年の3月末にアルビレックス新潟からゼルビアへ再加入した。ここまで24試合に出場するなど一定の貢献は見せているが、本人は今季のプレーについて「なかなか手ごたえを掴めないまま試合を消化した」と顔を少し曇らせる。15年のJ3時代と変わった守備組織や、「サイドに釣り出された状態など、自分の得意ではないところでのプレー」に課題を感じ、克服に努めている。

ゼルビアは現在15位で、既に残留を決めている。一方でホームゲームは4ヶ月近く勝てておらず、クラブに関わる人は勝利に飢えている。11月12日のレノファ山口戦は今季最後のホームゲームだ。

様々な縁が絡み合ってある者はプロサッカー選手となり、ある者はサポーターとなり、週末のスタジアムに集っている。今度こそはそんな人々が野津田で久しぶりの「勝点3」を得て、笑顔になれる試合が見たい。

文:大島和人(町田担当)


明治安田生命J2リーグ 第41節
11月12日(日)14:00KO 町田
FC町田ゼルビア vs レノファ山口FC