【名古屋 vs 千葉】 ウォーミングアップコラム:あらゆる誇りを身にまとい、“MF”佐藤寿人が必勝の舞台に立つ。

2017年11月10日(金)


自動昇格枠の奪回に向け、名古屋にとってはもはや負けどころか引き分けすらも許されない状況は際まってきた。ホーム豊田での千葉戦、そして最終節のアウェイ讃岐戦を連勝してライバルたちの動向をうかがう。現状ではすべては他力でしか結果が出ないが、一方で他力にすがるためには自力で2勝6ポイントをつかむ必要がある。その意味では「すべては自分たち次第」という彼らの哲学はいまだ健在で、だからこそシンプルな心境で緊張感あるゲームに臨むことができそうな期待感も漂ってきている。

そうした思いを強く、簡潔な言葉で表すのがキャプテンの佐藤寿人だ。「2つ勝つことには変わりないです。追い込まれている感じはそんなにはないですし、むしろやることははっきりしている。この2試合でシーズンを終りたい」。あらゆる可能性はもちろん頭の中にある。しかし今は、目の前にある自動昇格のチャンスに全精力をもって挑む気持ちしかない。プレーオフに進出することなく、42試合でJ2での戦いを終えることしか、今は考えない。

経験豊富な佐藤自身にとっても、今季はなかなか紆余曲折の激しいシーズンだったと思う。12年間を過ごし、チームのアイコンともなっていた広島を飛び出し、35歳にして名古屋に新天地を求めた。大きくチームの陣容が入れ替わる中で移籍1年目ながらキャプテンを任され、その知名度からチームの公式イベントなどにも引っ張りだこ。ピッチ内外で生まれ変わった名古屋の広告塔としての存在感を発揮してきた。ピッチ内では風間八宏監督の唱える“技術”至上主義のサッカーに触れ、サッカーの新たな扉をいくつも開かれた。移籍後初ゴールの後にすぐさま負傷離脱したのは痛かったが、それでもここまで26試合出場で5得点。純然たるストライカーとして起用されることは少なく、ベンチを温める時期もあった。昨今はサイドハーフとしてのプレーが続いており、新境地を拓いた感すら表現していることには感服するほかない。風間監督は佐藤を評して“サッカー小僧”と言うが、まさに言い得て妙である。誰よりも結果に、そしてサッカーが上達することに貪欲な男は、その姿勢をもって若く新しいチームの頼れる大黒柱となってきた。


生まれついてのキャプテンはこの最終盤を戦うチームの全てに目を配ってもいる。ホーム最終戦を前にして負傷離脱していたガブリエル シャビエルが復帰するという朗報が飛び込み、「このタイミングで戻ってきてくれた」と戦力拡充を喜ぶ一方で、チームのために戦ってくれている選手たちへの気遣いも忘れない。「選手それぞれで置かれている状況は様々あると思うけど、とにかくチームのために、J1に戻るためにという思いで取り組めている。そこで今チーム状態が良いということを感じています」。例えば前節の岡山戦でスタメン出場し、好プレーを見せた押谷祐樹はシャビエル復帰に押し出されるようにしてベンチスタートが濃厚に。しかし押谷は「岡山戦で得点して、代えにくくしてやろうと思ってたんですけどね。自分のせいです」と苦笑いしつつも、サブ組での紅白戦に全力を尽くしている。「オシはやり続けてくれていますし、すべてはチームの勝利のためにという思いで、それぞれの選手が想いを集約させてくれている」。チームでも数少ない昇格経験者の佐藤も、力を尽くしてくれているチームメイトたちに賛辞を惜しまない。

そして佐藤自身もまた、チームのために、という想いを強く抱いてプレーに臨む。前述したサイドハーフ起用は10月1日の第35節岐阜戦の試合中にスクランブル的に発生したものだったが、以来背番号11は常に左サイドを主戦場としてきた。当初は「ゴールから少し遠い」とFW的な不安も口にしていたが、そもそもが流動的な攻撃を主体とするチームの中で、日を追うごとにゴールへと近づく術と守備のタスクを共存させるようになり、ここ2試合ほどではむしろ有能なサイドハーフとしての存在感すら発揮するようになってきた。前節の決勝点を生んだ左サイドの崩しは佐藤の絶妙のフリーランなしには語れない。「あの動きこそが“ディス・イズ・風間サッカー”ですよ」と笑った“MF”は現在の役回りに、「昨季の広島では得点したい時には試合に出られたけど、試合を終らせる時には出られなかった。今はどんな時でもチームのために戦える。それが楽しいんです」と相好を崩す。やはりこの男、生粋のサッカー小僧である。

今季の豊田スタジアムにおいて、名古屋は2勝3敗2分とやや勝率を悪くしている。千葉に勝ってようやく勝率5割という成績には「それだけ多くの方々に悔しい思い、悲しい思いをさせてしまっている」と佐藤も申し訳なさそうだ。それだけに彼らのモチベーションは高く、「一つでも多くの得点という喜びを共有する形で、多くのファン、サポーターの方々の期待に応えていきたい」という佐藤の発言にもつながっていく。もちろん、スコアラーの座を譲るつもりは毛頭ない。

「この大事な試合でもしっかり仕事をしたいなと思いますし、アシストだけでなくてゴールという部分で仕事をしたいです。今日(9日)、実際にスタジアムでピッチを確かめることもできて、良い手応えを感じつつトレーニングができましたし……やっぱりゴール決めたいですね。古巣相手ですから」

同じ中盤として兄・勇人とのマッチアップが増えるであろうことも楽しみにしながら、佐藤寿人は千葉戦のピッチに立つ。キャプテンの、点取り屋の、そしてチームのために身を尽くせる誇りを抱きながら。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


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