【広島 vs 川崎F】 ウォーミングアップコラム:超攻撃的サイドバックに挑戦中。課題を糧に、茶島雄介は成長を誓う

2017年10月20日(金)


茶島雄介(写真)は悔やんだ。自分自身のプレーに対して、悔しさを噛みしめていた。
前節・鹿島戦、67分から出場した背番号7は、本来のポジションであるボランチやトップ下、サイドハーフではなく、サイドバックに位置した。スピードとキック力を活かそうと森保一監督時代からワイドの位置でトレーニングしていたが、ヤン ヨンソン監督は彼を最終ラインの一員であるサイドバックにコンバート。天皇杯でもその位置で起用して手応えをつかんだ指揮官は「彼が入ることでオフェンシブにいける」と判断、得点をとるために彼を右サイドバックとして投入したのである。

ファーストプレーで放ったシュートがバーを直撃するなど、攻撃面では成果をあげた。指揮官も「望んだプレーはやってくれた」と評価を高めた。だが、茶島が感じていたのは敗戦の責任。懸念していた守備面である。

「練習ではある程度できていた」と茶島は言う。天皇杯・横浜FM戦でも齋藤学を相手に堂々とわたりあい、突破は許さなかった。足立修強化部長をはじめ、周囲も「いい守備をしていた」と高く評価。サイドバックとしてのスタートをしっかりと切れたと誰もが思っていたし、茶島自身も自信を感じていたはずだ。

だが84分の失点が、彼の心に影を落とす。広島の左サイドから入れられたクロス。ニアで土居聖真が潰れたことで逆サイドの鈴木優磨がフリーとなって押し込んだシーン。この時、鈴木のそばにいたのが茶島だった。

鈴木には当初、千葉和彦がついていた。だが、左サイドのケアに水本裕貴が釣り出されたことで、ニアの土居を千葉が捕まえに走る。その結果として鈴木がフリーになってしまったのだが、茶島はそこで自分の動きを悔やむ。
「(鈴木が)フリーでいたことをもっと速く、気づいていたら」

この時、茶島はレアンドロをケアしていた。それでも、もし左サイドからクロスが入ってくる前に鈴木の危険性を認識していたとしたら、彼のスピードであれば間違いなくストライカーをフリーにさせることはなかっただろう。だが茶島は、鈴木を視界に入れてはいてもその危うさに気づいてはいなかった。左サイドで鹿島の攻撃が急展開している中、逆サイドにいた茶島はジョギング。クロスが入った後に慌ててスタートを切っても間に合わない。確かにレアンドロもフリーにはしたくない。ただ、判断すべきは「どちらが危険か」ということだ。そしてその判断は瞬間。無意識で動くには、やはり経験なのである。

「ああいうシーンはトレーニングではあまり、出てこない。出てきたとしても、ごまかされがちになる」
茶島は自分を振り返る。
「起きた現象にどう対応し、どう守っていくか」
元来が攻撃的な選手である7番にとって、自分から離れた場所にある危機を察知することには慣れてはいない。だがサイドバックの守備は、1対1でのやりとりが注目されがちだが、むしろ逆サイドにボールがある時にどういうポジションをとるかの方が重要である。どこまで絞るのか、誰をマークするのか。そこを肌感覚で理解するには、もしかしたら失敗が必要なのかもしれない。

茶島がサイドバックとして大きな可能性を持つことは、間違いない。バー直撃のシュートが左足だったように、左右両足で精密かつ強烈なキックが蹴ることができるプレーの質は、かつて広島の攻撃を牽引し日本サッカー史にその名を刻んだ偉大なサイドバック・駒野友一(現福岡)を彷彿とさせる。スピードもチームトップクラスでドリブルも持っている。チームプレーをやりつつ、個人でDFを切り崩すこともできる。

「彼の持ち味であるスピードや足下の確かさを出してくれれば(サイドバックとして成功できる)。調子も上がってきているし、元気もいいからね」
ヨンソン監督の期待は、広島の期待。育成組織から育ち、東京学芸大を経由して広島に戻ってきた地元の希望は、鋭敏かつ献身的なサイドバックとして大成できるか。

「自分の特長は攻撃。もっとクロスを磨いて結果に繋げたい。もちろん、前のポジションでやりたいという気持ちもあるけれど、与えられた場所で自分の力を発揮することも、プロとしてのやりがいだから」

考えてみれば、圧巻のクロスの質とドリブルで時代をつくった名サイドバック・服部公太も、もともとはトップ下だった。偉大な同郷の先輩であり7番の先駆者である森崎浩司も、アテネオリンピック代表ではサイドからゲームをつくった。茶島雄介も、広島の伝統である「ワイド攻撃」を引き継げる才能を持っている。だからこそ、鹿島戦の「失敗」を糧としてほしい。サイドを打開できず苦しみの中にあるチームを、広島にとって特別な番号である7番を背負う男が救う可能性は十分に持っているはずだ。

文:中野和也(広島担当)


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