【川崎F vs 仙台】 ウォーミングアップコラム:知念慶を影で支えた吉田勇樹コーチと、鬼木達監督の胆力

2017年10月7日(土)



知念慶(写真)の名前を試合前のメンバーリストの中に見つけ「そう来たか」と思ったのだが、まさかあれだけの仕事をやってのけるとは思わなかった。仙台でのYBCルヴァンカップ準決勝第1戦での話だ。鬼木達監督はこれまで、ストライカー枠として森本貴幸をベンチに入れてきていた。途中交代出場ながら驚異的な得点率を見せてきたその森本が第1戦の前日練習を回避。ベンチからも外れるのは確実だった。ただ、鬼木監督がその穴を誰で埋めるのかについて、実はそれほど気にはしていなかった。

メンバー入りまでは行くにせよ、そこから試合に出る、というところの壁は意外に大きい。特に勝っている状態と負けている状態とでは、負けている時の方が監督の采配は保守的になりがちだ。考えてもみてほしい。それまでに何試合も起用してきた実績のある選手と、ルーキーイヤーでまだプロとして得点がない選手とで、どちらを優先的に使うのか。練習試合ならまだしも、これはタイトルがかかった準決勝という大舞台で、0−3という一方的なスコアでの交代采配だった。だからこそ、第1戦の後半70分の交代采配は、意外なものだった。

鬼木監督から「とにかくゴールを狙うように。ゴール前でしっかりとゴールを取れる位置にかまえていればボールが来るから」という指示を受けたという知念は出場直後のプレーで相手選手のボールコントロールを制限。チームにコーナーキックをもたらすと、これが奈良竜樹のゴールにつながる。後半アディショナルタイムには、その知念自らが貴重な2点目を頭で決めて結果を出した。一気に注目を集めた形の知念だが、これだけ試合に絡めない経験はサッカー人生の中では初めてだとのことでさすがに夏前に少しだけ腐りかけた時期を過ごしたという。そんな知念を救ったのが、吉田勇樹コーチだった。

吉田コーチに「絶対に良い準備をしてたら出番来るから」と励まされた知念は、メンバー外選手だけのトレーニングにも真面目に向き合ったという。そうした姿を知っていた鬼木監督は、だから知念の起用についてはずっと頭の中にあったと話す。努力した若手選手を土壇場で起用する。その期待に結果で答える知念の決定力はもちろん、実績のない若手を起用する鬼木監督の胆力にも驚かされた。

吉田コーチの適切なアドバイスが必要だったにせよ、自らの努力でチャンスを掴んだ知念は準決勝第2戦で再びチャンスを貰えるのかどうか。森本が練習に復帰しており、どうなるかは予断を許さないが、注目したいところだ。

文:江藤高志(川崎F担当)


JリーグYBCルヴァンカップ 準決勝 第2戦
10月8日(日)15:00KO 等々力
川崎フロンターレ vs ベガルタ仙台

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